日本カトリック司教団メッセージ「性虐待被害者のための祈りと償いの日」の設定にあたって
2016年 日本カトリック司教団が発表した「『性虐待被害者のための祈りと償いの日の設定』にあたって」のメッセージは以下のとおりです:
日本カトリック司教団メッセージ
「性虐待被害者のための祈りと償いの日」の設定にあたって日本のカトリック信者の皆様へ
はじめに
教皇フランシスコは、全世界の司教団に向けて、「性虐待被害者のための祈りと償いの日」を設けるように通達され、日本ではこの日を「四旬節・第二金曜日」にいたします。第一回目は、2017年3月17日(金)になります。司教団としては、その直前の2017年2月の司教総会中に、性虐待被害者のいやしと償いの意向でミサをささげることにしています。
「祈りと償いの日」は、四旬節の金曜日という回心にふさわしい日としましたが、同時に象徴的な日でもあります。それぞれの教区司教の呼びかけに従って、四旬節の間、あるいは前後の日曜日などを使って、祈りと償い、被害者の痛みを学ぶ機会を作ってくださるようにお願いします。
教皇フランシスコの意向
2002年、米国のボストンで聖職者による子どもへの性虐待事件が報道され、世界各地で同様の事件が明るみに出ることになりました。教皇フランシスコは、教皇庁に新しく「児童を守るための委員会」を設立し、教皇自らがこの問題に真剣に取り組む姿勢を示されると同時に、全世界の教会がこの問題に真摯に向き合うように促しておられます。そして全世界の司教協議会に対して、子どもに対する教会のメンバーの責任について明確に意識できるように、神により頼む日として、「性虐待被害者のための祈りと償いの日」を設定するよう指示されました。
教皇の意向は、以下の諸点に要約されます。
- 教会のメンバーによって、また家庭や教育現場において行われた、子どもへの性虐待の罪について、神からのゆるしを願うこと。
- これらの重大な犯罪が、教会のメンバーによって行われたことを公に認めること。
- 教会の権威者たちが、虐待の加害者を秘匿し、被害者の痛みを無視した罪について、神のゆるしを願うこと。
- 被害者のケアをする責任は、教会のメンバーとしてすべての人におよぶことを、皆が認識できるよう恵みを願うこと。
- 被害者とその家族のために神のいやしと支えを願い、教会がその人々の内的いやしと和解の歩みに有効に寄り添うことができるよう祈ること。
- 虐待の被害者から何らかの反応があった場合、特別な司牧的な配慮をもってすぐに応えるようにすること。
日本の司教団として
日本司教団は、2002年、聖職者による子どもへの性虐待の事例の調査を行いました。その結果、日本でも同様の事件は存在することが分かり、この事実を受けてメッセージを出すとともに取り組みを始めました。2002年6月には、「子どもへの性的虐待に関する司教メッセージ」を発表しました。そこでは、「性虐待は、無防備な子どものからだ、たましいに傷を負わせる恐ろしい犯罪であること、日本でも不幸にして聖職者、修道者による性虐待があったことが判明したこと、司教団として十分な責任を果たして来なかったことを反省し、被害者の方々には誠実に対応するとともに、加害者である聖職者、修道者には厳正に対処すること、子どもの人権擁護のための活動、またかれらの育成に携わる学校・施設で働く者、および聖職者、修道者の養成に力を注ぐこと、このような事件が起らないように自らを正し、教会の刷新に励んでいくこと」を表明しました。
続けて、2003年2月に司教のための対応ガイドラインを発表するとともに、カトリック中央協議会に「子どもと女性の権利擁護のためのデスク」を設置し、具体的な取り組みと啓発活動を推進しました。また、2013年2月には司教のための対応ガイドラインの補足として、『教会が子どもの権利を守るために〜聖職者による子どもへの性虐待に対応するためのマニュアル』も発表しました。
今後も、被害者の方が声をあげたときに、各教区として問題解決をはかるための体制を整えるとともに、聖職者と神学生の意識を喚起するために養成を徹底し、教会のメンバーの意識化のために啓発を行っていきたいと思います。
終わりに
みなさん、すべてのキリスト者とともに、傷ついた被害者の方々の悲しみと苦しみを理解し、彼らのいやしと回復のために、いつくしみ深い神に祈り、また、全世界の教会がこの困難な状況を乗り越えるために、神からの恵みと力づけを祈りましょう。わたしたち日本の司教は、聖職者、修道者、信徒のみなさんとともに、日本においてこのようなことが起こらないよう、重ねて自らを正し、教会の刷新に励んでいきたいと思います。2016年12月14日
日本カトリック司教団